「よだきい」という方言
今週のお題「方言」
私は高校卒業まで、鳥取県内で暮らしていた。鳥取県の、中部と東部でよく使われる方言のひとつに「よだきい」がある。
高校を卒業してすぐ、九州の大学に進学した。九州で暮らすようになって初めて、大分県や宮崎県の方言にも「よだきい」という表現があることを知った。しかも、まるっきり違う意味で使われているということを。
鳥取県中部/東部の出身者が、大分/宮崎方言の「よだきい」を初めて聞いたらどう反応するだろう? おそらく、「え、私、何か悪いことをしてしまったのだろうか」というふうに思うだろう。私は、初めて聞いたときビビった。
鳥取県中部/東部方言の「よだきい」は、罵倒語である。しかも、「人間として最低」という感じの罵倒語である。強欲、うるさい、不快だ、汚い、などいろいろな意味で使われる。
高校時代、漢文の授業で荘子の言葉「君子の交わりは淡きこと水のごとし、小人の交わりは甘きこと醴のごとし。」を習った。そのとき、ある生徒が「醴のごとし」の部分を「よだきい」と訳した。教師も生徒も「ああなるほど」と思ったようだった。
大分/宮崎方言の「よだきい」は、「面倒だ」「疲れた」という意味らしい。語源は古語の「よだけし」らしい。
「激しく立腹しているわけではなさそうだが、『よだきい』という言葉がよく使われる。ひょっとしたら、『よだきい』は方言かもしれない。」と私が最初に思ったのは、大学に入った年のゴールデンウィークの頃だった。
思い切って、「よだきい」の意味を聞いてみた。すると、説明がなされた。
鳥取県中部/東部方言としての意味を話したら、やはり驚かれた。「鳥取出身者のいる場では、方言の意味を説明したほうがよさそうだな。」と言われた。
大分/宮崎出身者が、鳥取県中部/東部方言の「よだきい」を聞くことは、あまりないだろう。陰口以外では、ほとんど使わない言葉である。私も、九州では使わなかったと思う。(私の場合は、「陰口」よりも、回避という策を取ることが多い。)
同じ言葉が、地域によって全く違った意味を持つものになってしまう。しかも、「とんでもない罵倒語」と思い込んでしまってコミュニケーションを取る。今なら笑い話である。が、当時は本当にビビりまくっていた。
これから先、他の地方の方言でもこのような経験をすることがあるだろうか? 他の人はこういう経験はないのだろうか? この記事を書いていて思った。