karotousen58のブログ

「変なことを思い出す→そのことについて、変な見解を述べる」というブログ

誤解されていた「水晶米」

特別お題キャンペーンの記事では過去に、「お若い人には想像のつかないであろう世界」を書いたことがある。今回も、お若い人を惑わすかもしれない。

平成の米騒動」よりも昔の話。「標準価格米、自主流通米、食糧管理制度、水晶米」という言葉、お若い人にはどの程度通用するのだろうか? 

 

このキャンペーンを知って、私の頭に最初に浮かんだものは「水晶米」という名の米である。1970年代に、うちではこの米を買っていた。

この「水晶米」の味を、私の家族は誤解していた。昭和が終わりかけるまでずっと。「誤解していた」とわかった頃には、水晶米は売られていなかった。「パールライス」という名前に変わっていた。

「水晶米の本当の味、どんな感じだったのだろう? 水晶米さん、家族が変な炊き方をしたために『まずい米』とずっと誤解して、ごめんなさい。」という内容の記事になる。

 

私の母は、機械音痴である。しかも、「説明書を読まない」人でもある。昭和が終わりかけるまでうちでは、この母がトンデモな方法で米を炊いていた。つまり、「水晶米」はトンデモな方法で炊かれていたことになる。

トンデモ故、まずいご飯ができあがる。ところが、遠方の大学進学をきっかけに自炊を始めるまで私は、この「トンデモ飯」のことを変だとは思っていなかった。

では、トンデモな方法とはどんなものか? それは、「米櫃の使い方を誤解する」プラス「洗米してすぐに炊く」という方法だった。

うちで使っていた米櫃は、「1合(150g)、2合(300g)、3合(450g)」の3レバー方式となっていた。レバーのところには、「1.5」と大きく書かれていた。そして、「1.5」の下に少し小さい字で「1合」と書かれていた。他のレバーも同様だった。

母はずっと誤解していた。「1.5合、3合、4.5合」の3レバー方式であると。

1970年代からずっと、こういう状態で米が炊かれていた。このトンデモが発覚したのは、1988年の夏だった。そのとき、私と弟は帰省していた。当時、弟は大学の3回生だった。

「ご飯を3合炊いて」と、私は母から頼まれた。

私は「1.5」レバーと「3.0」レバーを使って3合計量した。洗米後すぐには炊かず、米を水につけておいた。それを見て母が言ったのだ。「何で炊かないのよ」と。

私は答えた。「洗ってすぐに炊いた米じゃおいしくないから」と。すると母が答えた。「言い訳するんじゃありません」と。

そのとき、近くに弟がいた。助かった。弟も言ってくれたのだ。「夏でも30分はつけとかんとまずいよ」と。とりあえず、言い訳ではないということはわかってもらえた。

炊きあがったご飯を見て、母が言った。「このごはん、硬すぎるし量がおかしい。3合と言ったわよ。」と。そこで私は、米櫃のレバー部分に書かれた数字を母に見せた。

今度は母も納得した模様。やりとりを聞いていた弟も、「炊飯器がすぐに壊れて頻繁に買いかえるはずだ、こりゃ」と言った。弟は「高校卒業まで、いろいろな炊飯器を見た」と言った。

もっとも、今の炊飯器では、洗米後すぐに炊いてもおいしいらしいが。

 

九州の大学へ入学(1983年)後、最初の夏休みまでは、鍋でご飯を炊いていた。炊飯器を買う金銭的余裕がなかったからだ。料理本でご飯の炊き方を確認してから、炊いた。「洗米してすぐ炊いたごはんはまずい。夏なら30分以上、冬なら1時間以上(できれば2時間)吸水させてから炊くほうがよい」と、料理本には書かれていた。小学校家庭科の授業でも、そのように習った。米と水の量や吸水時間を料理本と同じようにして、炊いていた。

「あれれ、結構おいしいじゃねーか。安い米を下手な私が炊いているというのに。しかも、私はいわゆる貧乏舌の持ち主なのに。」と思った。

他の人が炊いたごはんを食べることもあった。そのごはんもとてもおいしかった。

「きっと、九州の米は鳥取の米よりもずっとおいしいのだろう。稲は元々熱帯性の植物だし。」「水晶米は、たぶん標準価格米。ひょっとしたら、九州では自主流通米のシェアが高いのかもしれない。」と、ずっと思っていた。「実家で、トンデモな方法でトンデモなまずい飯が炊かれている」とは、夢にも思っていなかった。

 

1970年代と1980年代は、「米の流通」に関して大きな変化があった時期だった。

1942年に食糧管理法が制定され、食糧を政府が管理統制する食糧管理制度が始まった。米価と米流通も、当然対象となっていた。その後、1972年に標準価格米制度が取られた。さらにその後、食糧管理法は1981年に大幅に改正された。

そして、食糧管理法は1995年に廃止。かわりに食糧法制定。食糧管理制度の呼称も食糧制度と改められた。その後、食糧法は2004年に改正された。

食糧管理法の時代には、「標準価格米」なる米と「自主流通米」なる米が流通していた。「標準価格米」は、政府が指導価格を定め、小売業者が扱っていた米」である。「自主流通米」は、価格設定には政府は直接関与せず、市場経済的に価格が決められていた。やはり、自主流通米のほうが高級なものが多かった。

「標準価格米」では、その地方(あるいはその近郊)の米が使われていた。銘柄指定なんてことは論外。

1981年の食糧管理法改正後、米の卸売や小売の営業区域が拡大された。コシヒカリササニシキなどの「米の銘柄」が一般庶民の間でも話題になったのは、法律改正と区域拡大がなされてからのことである。

「うちで食べていた水晶米よりも、九州で売っている標準価格米のほうがおいしい米なのだろう」とか「九州では、自主流通米のシェアが高くて、知らないでそれらを買っているのかも」と私が思ったのは、こういう背景があったからだ。

 

「水晶米」がまともな計量と浸水のもとで炊かれたら、どういう味がしたのだろう? もしもタイムマシンに乗って過去に行けるのなら、実際に炊いて味見をしたい。

 

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